農業における新型コロナウィルス感染症に関する2つ問題について
徳本です。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が、世界を席巻しています。未曽有の事態です。今から2か月前、ここまでの状況をだれが想像できたでしょうか。
このブログを書いている4月2日現在、僕たちが拠点を置く鳥取県では、感染者は確認されていませんが、時間の問題だと思います。
経済的な影響も甚大で、飲食業やライブ会場、イベントホールなど、人の集まる業態においては特に顕著です。おそらく今後、業態問わず、様々な仕事において影響が露呈されるでしょう。農業界でも多くの品目の相場が低迷、一部品目は乱高下しており、予断を許さない状況が続いています。
今日のブログでは、COVID-19に関して僕が特に注目している2つの点について書いてみたいと思います。
品質管理について
もしも、僕たち農業生産者がコロナウィルスに感染した場合はどうなるのか?
農水省でもガイドラインを出していますが(*1)、対策を徹底しながら、出荷は継続とあります。
農場で感染者が発生した場合、濃厚接触者と確定された従業員、家族等は14日間の出勤停止になります。
現時点で、食品を通じての感染は確認されていないので、先に書いた農水省のガイドラインにあるとおり、出荷は可能です。しかし、必要なスタッフが出社ができないとなると、収穫・出荷作業を停止せざるをえない事態にもなりかねません。これは、特に家族経営の農家においてはインパクトが大きいと想像します。
トゥリーアンドノーフでも、当面のあいだ県外(都市部)への外出を控え、体調管理・手洗いうがいの徹底、不要不急の会合や飲み会などへの参加は控える、屋内作業時のマスク着用やアルコール消毒などを徹底しています。
余談ですが、この時期、当農場では密室のトラクター(トラクター1台につき作業者一人)で終日作業していることが多いです。
この作業に限っていえば、もしもCOVID-19に罹患してしまった場合でも症状が出てなければ、自宅から車で出勤し、トラクターに直行して作業すれば、誰にも接することがないので問題ないような気もします。
サプライチェーンについて
COVID-19の流行を食い止めるため、海外では都市封鎖や外出禁止・自粛などが実施されています。当然、経済活動は停滞するのでモノの流れも悪くなります。
日本農業は、肥料原料や畜産飼料(特に濃厚飼料)などの多くは、その資源を海外に依存しています(*2)。輸入量が減少すれば、物価は上昇します。また多くが貨物船で輸入されるので、今後も現在の状況が長引けば、海運コストの上昇など多方面で負の影響が出てくるでしょう。
流通関係者、肥料・資材メーカーなどから常に情報を仕入れながら、いつも以上にアンテナを張り巡らせています。
年内の物量は確保できているが、COVID-19の影響が長引けば、来年以降の生産資材に影響が出はじめるかもしれないとの声が多いですね。尿素や苦土などの肥料原料は中国での生産が多いのですが、先月から現地の工場は稼働再開されつつあるようです。
サプライチェーンが世界中に張り巡らされ、僕たちは意識することなくその恩恵にあずかり、必要なものを必要なだけ、しかも安価で利用することができていました。
これまでは。
今年は記録的な暖冬、雪不足で全国的な水不足が懸念されていますが、東南アジアでも干ばつ被害で農産物の収量が激減、米の国際価格はじわじわりと値上がりしています(*3)。
COVID-19と気候変動による影響が重なることで、これまで当たり前だったモノが入手できなくなったり、できたとしても非常に高額で購入できない、といったケースも今後出てくると思われます。
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COVID-19の影響が長期化の様相を呈しており、また過去の歴史から見て、同様の問題は定期的に発生すると思われます。
日々の農作業を粛々と進めながらも、このような時代においての「持続的で強い農業」の意味合いを、今日挙げた問題点なども含めて深く考える機会ともなっています。
これら問題をどのように受け止めて、対策し対処していくかについては、僕の中で整理できしだい、ブログで共有したいと思っています。
COVID-19が猛威を奮っています。皆さん、どうぞご自愛ください。
それではまた来週。
*1 農林水産省「農業における新型コロナウイルス感染者が発生した時の対応及び事業継続に関する基本的なガイドライン」
*2 日本農業新聞「東南アジア干ばつ 米の国際相場が急騰」2020年3月29日
*3 農林水産省「(19)飼料作物等」
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