イカリファームを視察訪問

徳本です。

日本ニューホランドの担当者に、近畿・中部エリアで組織マネジメントに注力されている、土地利用型作物が主軸の大型農業法人を紹介して欲しいとお願いしていたところ、滋賀県近江八幡市にあるイカリファームを紹介いただき、さっそく視察訪問してきました。

視察では、井狩篤士社長が経営概況やマネジメントについて丁寧に説明くださり、色々と意見交換もできました。

イカリファームは、約18年前に井狩社長がお父さんの後を継いでから、組織経営と規模拡大を重視、実践されて来ました。現在では、自作(米・大豆・麦)125ヘクタール、および作業受託100ヘクタールと、国内でも有数の大型農業法人です。

しかもその規模を大型機械化、ICTの活用、組織マネジメントなどにより、10名強のスタッフで管理されています。これは実に、トゥリーアンドノーフの半分の人数で、10倍の面積を管理しているということです。


イカリファームのライスセンター


イカリファームの大型農業機械

農業経営にも色々な価値観や規模感があって当然ですし、地域性もあります。また、それぞれに抱えている課題、それらを解決するための解もそれぞれに違ったりします。

トゥリーアンドノーフは、強い技術と組織の上に成り立つ、超大規模栽培を実践し、将来的には海外にも圃場を展開していきたいと考えています。科学的視点での技術管理、大型機械化・自動化はもちろんですが、組織マネジメントをどうするか? という事も、常に頭を悩ます課題としてあります。

僕の持っている農業経営の価値観と井狩社長のそれには近い部分も多く、それがとても嬉しく、もちろん農業経験は大先輩なので学びの多い時間でした。

機械や技術は手段である

井狩社長は現場から少し距離をとり、俯瞰的に、経営やマネジメントについて常に考察し、未来に向かって前進している農業経営者でした。

ある程度の売上・経営規模を前提とした場合ですが、社長がトラクターに乗らないというのは重要なことだと考えていて、井狩社長もその事を凄く意識されていました。

経営者としてやるべきことにフォーカスし、そこに自分の時間を使い、組織の生産性をマネジメントしていく。

農業法人の社長といえばスーパーマンみたいな人が多く、知識も技量もずば抜けているので、現場から距離を置くというのは一見大きな損失に見えます。

しかし、突出した個の能力だけで経営を持続させていくというのは不可能で、いつか必ず終わりが来ます。次の世代にどんどん委ねていきながら、どのような人材を残していくのかということを常々考えておくことは、とても大切な事だと考えます。

「土地利用型の農業は、装置産業とも言えます」。機械や技術は経営目的を達成する為の手段であり、投資比率・回収含めて、どのような事業スキームが適性なのか?一般的な企業ではごく当たり前のような話も、同業者で話ができる機会はあまり多くありません。井狩社長の経営者視点の言葉は、ある意味斬新でした。

どうすれば現場に当事者意識が生まれるのか

イカリファームは、トヨタ自動車のカイゼン5Sを取り入れていたり(*1)、収支は公開し数字に対する意識改善を図ったり、豊作計画(*2)によるデータをベースにした工程管理、従業員のキャリアパス、将来的には年収ベースでn万円、年間休日n日を実現など、それぞれに明確な考え、目標をもっておられました。

また、現場を管理するスタッフに、資材・物品の購入などはある程度現場に予算を付けて決裁権をゆだねている、ということも実践されていました。しかし、そこには在庫管理におけるルールなども設定してあり、現場スタッフが当事者意識を持って関われるような工夫がされています。

その他にも、色々と試行錯誤されている部分もあるとのことでしたが、問題意識は共通の部分が多かったです。

農業でどのような社会課題を解決するか

農業は、その地域をどう守っていくのかという側面を持ち合わせています。

経済合理性と、昔からの風習も含む地域保全は相反する要素も多いので、難しい経営判断を迫られるケースが良くあります。

井狩社長は、今後さらに広い範囲で大規模な農地が出てくる時代を見越して、経済合理性の上に成り立つ広範囲な作業体系を、試算していました。

これは、鳥取県東部で農地を急拡大していきたい僕にとって、とても参考なるものでした。

農業経営者を育成し、増やしていくことは、これから益々重要になってくると実感した視察訪問でした。

井狩さん、お忙しい中ありがとうございました! KODA FARM、一緒に行きましょう(笑)。

*1 イカリファームのカイゼンの様子はイカリファームホームページにてご覧になれます。
*2 豊作計画(by トヨタ自動車)


徳本 修一

トゥリーアンドノーフ代表取締役。消防士、芸能マネージャー、歌手活動を経て、子どもたちがおいしく安心して食べられる野菜を作るため鳥取に帰郷しトゥリーアンドノーフを発足。おいしい野菜を作るぞー!(詳しいプロフィールはこちら)

あわせて読みたい

4件のフィードバック

  1. ひのえうま より:

    いつもブログを拝読しています。
    私も農作業のアルバイトをしていますが「当事者意識」という言葉は
    私が働いしてる農場でも頻繁に耳にする言葉です。
    しかし私はこれに疑問を感じています。
    当事者意識というのは経営者側からのご都合主義的な言葉であり
    私のような被雇用者の立場からすれば何をおっしゃるかとったところです。
    最低賃金で働く労働者に対して自分達に課せられた仕事の責任の範囲外まで意識を高めろと言われが意識を高くもったところで賃金には影響しません。
    こちらの記事に出てくるイカリファームさんがされているという決済権の付与は
    単に被雇用者の職責を拡大しているだけでありその範囲の中で責任を持つ
    というのは当然のことではないでしょうか。
    当事者意識を持つということとは全然別のことです。
    被雇用者に意識を持って働いてもらうには職責を明確にし
    目標とすべき成果と
    それを達成した時の報酬を
    明確にする必要があります。
    雇用者側が被雇用者の個々の業務において
    きめ細かな準備
    仕組の提供を怠っておきながら
    当事者意識を持って仕事に取り組めなど笑止千万でしょう。
    当事者意識を持って働いてそれによって
    被雇用者にはどのような利益があるというのでしょう。
    当事者意識という言葉に対するイメージは
    人によってバラバラですそれをどのように会社として評価するのでしょう
    当事者意識という言葉は仕事のできない経営者の逃げの言葉といわざるをえません!

    • 徳本 修一 より:

      コメントいただきありがとうございます。

      ひのえうまさんがご指摘の通り、タスク、責任の範疇、評価軸、それらの対価、また目標値を設定し達成した場合の対価など、事前に共通認識を図り、日々の業務に当たってもらうというのは、大前提の話だと思いますし、枠組みを作り、各スタッフと対話を図っていくというのは、経営者の重要な仕事だと認識しています。これらがコミットされている状況で、初めて当事者意識という言葉が使えるのだと思います。

      また、その農場で働かれている人それぞれに、仕事に求めるもの(やりがい、責任や報酬など)は違って当然ですので、そこもまず経営側が対話を通して、擦り合わせしていく重要な仕事だと認識しています。

      今回のブログで書かせて頂いている当事者意識は、上記が前提としてという意味で記載させて頂いており、また、その様な業務環境を整えている農業法人はまだまだ少ないという課題提議の意味合いも含めております。少し分かり辛い表記内容になってしまっていたかもしれません。

      引き続き、どうぞよろしくお願いします。

  2. ひのえうま より:

    徳本社長、直々のコメント
    ありがとうございます。
    また、詳しい説明もありがとうございます。
    ではもう少しお伺いしたいのですが、
    本文中に
    ””現場を管理するスタッフに、資材・物品の購入などはある程度現場に予算を付けて決裁権をゆだねている、ということも実践されていました。しかし、そこには在庫管理におけるルールなども設定してあり、現場スタッフが当事者意識を持って関われるような工夫がされています””
    とありますが、
    ここで書かれている当事者意識は、
    具体的にどのようなものなのですか?
    またここで当事者意識を持って関わるような工夫が
    なされているということは
    イカリファーム様は被雇用者に対して当事者意識を要求
    されているのだと推察しますが、
    徳本社長が返信で書かれている
    ””大前提””
    がすでに実施されているということになりますでしょうか
    徳本社長がおかきになっているとうり
    被雇用者の就労する理由や目的は様々です。
    職域を逸脱せぬよう働く者もおれば
    向上心をもって自ら勉強する者もおります。
    それぞれに適した目標や評価をもうけ、
    雇用側と被雇用側の
    同意が前提ということですが
    そのうえで当事者意識を持ってもらうというのは
    何が目的なのでしょうか。
    もうけた目標や評価を達成するための燃料のようなものなのか
    目標や評価とは別に
    職域を超えた自主性や努力、がんばりを求めているのか・・・・
    最初のコメントにも書かせて頂きましたとうり
    最低賃金で働いている仲間も多く、
    私も将来が不安になるほどの低賃金で働いています。
    農業は厳しい仕事です
    しかし大切な仕事です。
    当事者意識を持って仕事に臨めば
    賃金が間違いなく上がるのであれば
    当事者意識はもてるかも知りませんが!
    順序が逆なのではありませんか

    • 徳本 修一 より:

      ご質問の件について、回答させていただきます。

      まず、論点整理させて頂きますと、「経営者のいう当事者意識は、まずはマネジメント・仕組みが前提であり、被雇用者側にいきなり要求するものじゃない」というひのえうま様のご指摘だと理解しておりますが、前回の私の返信コメントにも書かせて頂いた通り、その通りだと思います。

      資材・物品の購入についてですが、前提となる予算計画があり、基本的にはその中でやり繰りをします。資材・物品はそれぞれに使用目的がありますが、各メーカー・問屋とやり取りし、合い見積もりを取り、費用対効果の高いモノを選定し、購入します。また、購入したものは、なるべく長く使用出来るよう、購入後の管理の方法も工夫します。この積み重ねが、会社の利益率を高めることに繋がり、結果そこで働く自分たちの待遇もより良くなっていくという事を、自分事の様に認識してもらうことを、当事者意識という表現で書かせて頂いております。

      ひのえうま様がおっしゃられているように、働く人それぞれに目的や意識は違いますので、これらの仕事を担ってもらうにあたり、本人がこれからどうしたいのか、という意思も重要となります。例えば、将来独立したい、経営やマネジメントをもっと学びたい、より責任ある立場で給与ももっと欲しい、などです。本人の意思が反映され、その仕事を担う、もしくは目標を達成出来た時に待遇はどう変わるのか、なども協議しお互いに共有していおくことが重要です。イカリファーム様もこれら何かしらのプロセスを踏まえていることが前提になっていると理解しています。そうでなければ、その仕事は受け身になってしまい、本来の目的を達成しずらくなるからです。

      ひのえうま様は、農業の厳しさと日々対峙しながら、真摯に業務に当たられている方とお見受けします。農業界全体で見ると、特に組織マネジメントは発展途上であり、改善の余地はあらゆる場面に存在しています。その様な中で、現場の不備・不満は経営側がくみ取りながら、また現場と対話をしながら改善を図っていく必要がありますし、現場の率直な声を上げていくことも同時に大切であると考えています。仮に、どうしても環境や待遇が納得いく形で改善されないという事であれば、別の職場を選択するということも被雇用者の権利です。また現場環境に多くの仲間が苦しんでいるという事であれば、自ら自分たちが理想とする環境を作っていくという事を決め、行動し、形にして行くという選択もあります。

      少し俯瞰的に見ると、当事者意識というのは、詰まるところ、自分の人生をどう生きたいのか、という事に回帰する要素が多いように思います。ですので、私個人としては、仕事は自己実現の手段であるという認識なので、価値感や環境がどうしても合わなければこれまで何度も転職してきましたし、今農業を営んでいる事も大きな目的実現の為の手段としてです。仕事は大切ですが、無くなっても、自分の人生は続いていきます。その観点で、ひのえうま様が何を大切とし、どう行動していくかは、ひのえうま様ご自身が決めることであると思いますし、それもまた当事者意識であると考えています。

      乱文にて失礼いたしました。

ご意見・ご感想をお聞かせください

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です