2016年 じゃがいも栽培 まとめ
徳本です。
じゃがいもの収穫と出荷、その集計作業が終わってから随分と時間が経ってしまいました。と言うか、年が変わってしまいました。
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、今年最初のエントリーは、昨年連載してきた「BLOF理論によるじゃがいも栽培のまとめと今後について」。
じゃがいも栽培のまとめ
まず、じゃがいも栽培全体の実績をお伝えします。
まとめ | |||||
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2015年 実績 |
2016年 | ||||
目標 | 実績 | 対2015年 | 対2016年 目標 |
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作付け面積 | 4.8ha | 2.3ha | 2.3ha | 48% | 100% |
総収量 | 41,050kg | 69,000kg | 24,646kg | 60% | 36% |
反収 | 855kg | 3,000kg | 1,072kg | 125% | 36% |
ご覧のとおり、総収量は2015年の実績、2016年の目標、ともに下回りました。
理由として、以下のようなものが挙げられます。
- 定植した種いもの数が、66%(2015年比)となった。これはほ場に機械を入れ、オペレーションコストを下げることを目的に畝幅を広げた=畝数を減らしたこと、初期の計画の計算ミス、種いもの数量管理ミスなどが原因
- 過去の実績から罹病する可能性が高いと想定されたほ場、水はけの悪いほ場などで、懸念していた問題が生じ、ほぼ収穫できなかった
- 土づくりができていなかった
当初の計画では、作付け面積は2015年に対して48%と半減させるものの、反収を3000kgと同対3.5倍に設定し、総収量は約70%増を狙う、というものでした。
しかし、上記に挙げた理由のとおり、種いもを同じ面積当たり前年の66%しか定植していなかったので、反辺りの収穫効率を実際には5倍以上実現しないと目標は達成できない、つまり定植計画を立てた時点で、目標達成が非常に困難な状況となっていました。
反収実績は2015年に対して25%増加したものの、作付け面積はマイナス52%、定植した種いもはマイナス33%ということで、総収量は60%にとどまる、という結果となりました。
2016年の目標に対しては収量、反収いずれも、達成率36%という結果でした。
もちろん、収穫したものがすべて一定の価格で出荷できたわけではなく、一定の品質を満たさないものについては価格を下げるか、あるいは廃棄することになります。
本来、ここで「秀品率」を提示しなければ、どれだけ出荷できたのか明確にできませんが、これも初期の計画段階において不適切な計算式を使用していたため、根拠ある秀品率が算出できませんでした(注)。
引き続き、品種ごとの結果を見ていきます。
メークインの結果
まずは2015年に失敗したメークインです。
メークイン | |||||
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2015年 実績 |
2016年 | ||||
目標 | 実績 | 対2015年 | 対2016年 目標 |
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作付け面積 | 1ha | 0.3ha | 0.3ha | 30% | 100% |
総収量 | 3,010kg | 9,000kg | 3,282kg | 109% | 36% |
反収 | 300kg | 3,000kg | 1,094kg | 365% | 36% |
ご覧のとおり、反収は2015年の3.6倍を達成していますが、作付け面積も30%に減らしているため、収量自体はほぼ横ばいとなりました。
メークインについては、当連載記事のモデルほ場である33番ほ場の考察について、もう少し詳しく説明します。
男爵の結果
続いて男爵です。
男爵 | |||||
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2015年 実績 |
2016年 | ||||
目標 | 実績 | 対2015年 | 対2016年 目標 |
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作付け面積 | 3.8ha | 2ha | 2ha | 52.6% | 100% |
総収量 | 38,040kg | 60,000kg | 21,364kg | 56.2% | 36% |
反収 | 1,000kg | 3,000kg | 1,068kg | 107% | 36% |
男爵は、2015年に対して反収はほぼ横ばい。作付け面積を減らした分、収量も減ったという結果です。
33番ほ場の実績
最後に、この連載記事で作業内容など、特に詳細に記してきたモデルほ場、33番ほ場の結果を共有します。
作付け面積 | 0.3ha | 定植数 | 5,581個 |
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総収量 | 2,098kg | 1株当たりの収量 | 376g |
反収 (対 2016年平均) |
880kg(80%) |
7月に投稿した記事で書いたように、5月から生育不良になり、思い切った追肥を行いましたが、ある程度成果に現れました。
写真のように、株によっては1kg以上獲れる場合もありましたが、ほ場全体として見ればバラ付きが多く、結果としては1株あたり376gという結果となりました。
公表はしていませんでしたが、1株あたり1kgの収穫を目指していましたので、それが達成できていれば、目標には少し及ばないものの反収2,640kgとなっていたはずです。なんでもそうですが、実績が出たあとのタラレバには意味がありませんが……。
続いては、以上の実績と、実際に実施してきたオペレーションなどを踏まえての考察を述べたいと思います。
まとめ
「本気で儲かる農業を目指す」として書いている記事ですから、まとめでは、まずこのことに触れなければいけません。
儲かったのか、どうか。
資料1は、2015年を100として2016年のそれぞれの数字を数値化したものをグラフにし、対比できるようにしたものです。
(資料1)
人件費は2015年に比べて大幅に削減していますが、やはり収量が前年の60%(目標の36%)、原価はそれほど抑えられてなく、収益はご覧のとおりのマイナス(赤字)でした。
次の資料2は、各1年の合計を100として、その中で各項目がどれくらいの割合を占めているかを見たものです。
(資料2)
このグラフでも顕著なのは、2016年の原価の割合が前年に比べてかなり大きくなっているということです。
なぜ、2016年の原価が上がったのか?
アミノ酸やミネラルなどの値の張る肥料をBLOF理論の教科書通りに投入したから、というのが最大の理由です。もちろん、収量が目標以上であれば、売上に対する原価率は下がるわけですが。
BLOF理論について
2016年のじゃがいも栽培は、僕たちトゥリーアンドノーフにとって、太陽熱養生処理は実施できていないものの、本格的にBLOF理論を導入した初めての野菜栽培となりました。
まず学んだことは、保肥力(CEC)が低く、土が痩せているほ場では、いくら土壌化学性を整えても、机上の計算どおりの望んだ結果は出にくい、ということです。
しかし、メークインの反収が3.6倍と上がったことなどは、栽培初期にアミノ酸肥料をしっかり投入し、もともとほ場に欠乏していたカルシウムやマグネシウムを施用した結果だと理解しています。
つまり、効果の見えたほ場もあれば、そうではないほ場もあり、2016年のじゃがいも栽培に関しては後者のほうが大きかった、と言えます。
計画の立て方
先にも述べたとおり、種いもの定植数が前年を大きく下回ってしまっていたことは、計画段階での明らかなミスでした。
また、ここ何年か連続してじゃがいも栽培を続けてきましたが、僕たちのほ場のある地域が比較的疫病が発生しやすい場所であり、また一度発病すると抑えることが非常に難しくなります。
一部で疫病が発生し、消石灰や銅剤で広がりを防除したが、食い止めるのは難しかった
結論として、栽培品目にじゃがいもを選定すること自体が適切ではない、少なくとも大規模に栽培する野菜としてはそう言えるかも知れません。
徳本の所感として
土壌物理性、つまり、水捌けがよく、保水性や保肥力のある土を作ることが最も重要であり、何よりもまず優先すべきことだと痛感しました。
それができたうえで、投入したミネラルなどが効果を発揮するわけです。どんなに高い肥料を投入しても、前提条件=土壌物理生が整っていないと野菜は育ちません。
引き続き、儲かる農業を目指す!
ご覧のとおり、僕たちの農業は、まだまだ儲かる農業になっていません。
しかし、今年のじゃがいも栽培で学んだことはたくさんあります。失敗を気にして凹むのか、それを糧だと思って前へ前へと進むのか。今、どちらを僕たちが意識的に選択するかが重要だと思います。
来季以降の作付け計画
じゃがいも栽培の結果を受けて、僕たちは今後の栽培計画を大胆に見直しました。
今年、10近くあった栽培品目を、来年以降は2〜3種類に絞り込みます。その中心となるのが小松菜の予定で、すでに1haの規模での栽培を開始し、来季の本格的な大規模栽培に向けて色々学んでいるところです。
* 何を栽培するにしても、初期の緻密な計画が重要であることを痛感した1年でした。緻密な計画によって根拠ある明確な目標ができてはじめて、進捗状況の確認や達成度が確認でき、またそれらに意味が生まれるからです。今年のミスを踏まえて、自分たちなりに栽培計画をいかに立てるべきかを再度検討し直しました。その内容については、また後日共有したいと思っています。
はじめまして。
人件費の中に、社長様の役員報酬は含まれておりますか? 気になりました。
もう一点、
運転資金は、銀行ですか?
拝見していてかなり体力が高いなぁと感じております。
スティーブ様
コメントありがとうございます。
トゥリーアンドノーフの徳本と申します。
ご質問の回答について以下の通りとなります。
○人件費について
生産労働時間×賃金単価での試算となります。役員も生産労働に従事しているので、今回の人件費に含まれています。
○運転資金について
銀行も御座いますが、弊社はシステム開発を主事業とするバリストライドグループ(東京本社)の完全子会社という位置付けとなっております。グループの新規投資事業として、有機農業における科学的視点での技術の体系化を図り、国内で最大規模の有機農産物生産事業の確立を目指し、事業を運営しております。
以上となります。
どうぞよろしくお願いいたします。
はじめまして 広島の農家です。私からすると、とても大きく 機械設備も大きいものを揃えておられ、刺激をもらいます。視察などたくさん行かれているようで。
未来に輝く有機農産物生産組織になれるように応援しています。