2016年 じゃがいもの土づくり

当然のことながら、じゃがいもの定植をする前に、圃場の土の状態を万全にしておく必要があります。

逃した太陽熱養生処理のタイミング

その準備の中で、最も高い優先順位にあるのが「太陽熱養生処理」です。これは圃場をリセットする意味で、基本的に夏場、必要な堆肥やミネラルを投入してマルチを張り、積算450〜900度の温度を土に加える作業です。

これにより、土壌を団粒化し、病害虫を防ぎ、野菜の生育に適した状態にします。

しかし、僕たちがBLOF理論に出会ったのは昨年の9月。夏場にやるべき、太陽熱養生処理を実施することができませんでした(*)。

何はともあれ土壌分析

定植を翌月に控えた今年2月。太陽熱養生処理ができなかったとはいえ、何もしないわけにはいきません。

とはいえ、闇雲に何かを実施していいわけがない。まずは土壌分析。圃場1枚ずつ分析し、そのうえで何をするかを決めていきます。

ここでは、じゃがいもを定植予定の圃場のうち、33番圃場を例に挙げて詳しく見ていきたいと思います。

33番圃場のプロフィールと土壌分析結果

  • 面積: 2546㎡(約25アール)
  • 昨年の作付け状況: 白ねぎ
  • 昨年までの使用資材: 発酵鶏糞ペレット、ゼオライト、天然にがり希釈液

鳥取のおいしい有機野菜 TREE&NORF 33番圃場

以下が施肥前と施肥後の土壌分析の結果です。まずは数字をご覧ください。

診断項目 第一回測定
(施肥前)
1月15日
施肥後の
想定値
第二回測定(施肥後)
4月21日
測定値 測定値 対:
施肥前
対:
想定値
比重 1.2 – – – 1.2 0% – – –
CEC 9.4 – – – 11.7 +24% – – –
EC – – – – – – – – – – – – – – –
pH(水) 7.1 7.6(*) 6.8 -4% -11%
pH(塩化カリ) – – – – – – – – – – – – – – –
アンモニア態窒素 0.1 10 0.1 0% -99%
硝酸態窒素 0.83 1 1.6 +93% +60%
可給態燐酸 30 47 76 +153% +62%
交換性石灰CaO 167 189 173 +4% -8%
交換性苦土MgO 20 48 35 +75% -27%
交換性加里K2O 32 42 39 +22% -7%
ホウソ 0.1 3.5 1.0 +990% -71%
可給態鉄 5.8 17.1 9.8 +69% -43%
交換性マンガン 0.1 22.3 4.9 +480% -78%
腐植 – – – – – – – – – – – – – – –
塩分 – – – – – – – – – – – – – – –

(PCでの閲覧に最適化した表になっています。スマートフォン等、小さい画面で読んでくださっている方、申し訳ありません)

第一回測定結果について

一言で言うと、土が痩せています

CEC(塩基置換容量。表内の赤い数字)が9.4と低い、つまり保肥力が弱い状態と考えられます。理想値は20〜30。CECの数値の大きいピート(泥炭)やゼオライトを施用するとともに、腐植酸を多く含む堆肥の投入が必要です。

ph(ペーハー。表内の青い数字)が7.1と高い、つまりアルカリ性に振れている状態です。phが高いと、じゃがいものそうか病の元である放線菌の一種が増殖しやすくなるので、6~6.5くらいを目安(*)に酸性に振る必要があります。

ミネラルは全体的に数値が低いです。塩基バランス、拮抗作用などを理解した上で、正しく投入する必要があります。特に交換性苦土MgO(マグネシウム。表内の緑字)の不足が顕著です。マグネシウムは葉緑素の中核物質で、不足すると光合成の機能が低下してデンプンの供給量が落ちるため、収量減に直結します。

ホウソや可給態鉄(鉄)、交換性マンガン(マンガン)などの微量要素も、不足すると病気や収量減の要因になりますが、かなり低い数値です。

第一回測定結果を受けて

上記の土壌分析結果を受け、梶岡牧場のヒューマス(資材証明書)を2月下旬に投入し、その後、ミネラル等を投入する、以下の計画を立てました。もちろん数量は、土壌分析結果を施肥設計シートに入力して算出し、設計したものです。

ヒューマス 870kg オーガニック742 400kg
リンサングアノ 130kg ハーモニーシェルS 40kg
マグキーゼ 135kg ブルーマグ 165kg
マンガンパワー 22kg アイアンパワー 22kg
ほう砂 2.2kg

まず、最初に投入するヒューマスの狙いは以下の4つに集約されます。

  1. 土壌の団粒化を促進する
  2. 有用微生物の数を増やす
  3. 有機態窒素を供給する
  4. この後投入するミネラルをより多く受容できる状態にする

つまり、本来であれば太陽熱養生処理によって獲得しておくべき状態に、少しでも近づけておくのが目的というわけです。

それ以外の肥料は、土壌の状態を表内「施肥後の想定値」に近づけるべく計算されたもので、何日かに分けて投入していきます。

鳥取のおいしい有機野菜 TREE&NORF 32番圃場にミネラルと投入

第二回測定について

上記内容を施肥してからおよそ1か月の4月21日に、二度目の土壌分析を実施しました。

全体的に数値は上がって来ていますが、想定値より低い数値です。

phが6.8(表内のピンク字)なので乳酸菌散布などでもう少し酸性に振り、ミネラルのキレート(*)が進めば数値がもう少し上がってくると考えられます。

じゃがいもは初期肥効がとても重要なので、アミノ酸肥料(魚抽出系)を全窒素量で10アールあたり15kg投入しているが、現在TREE&NORFが使用する土壌分析の器材(ドクターソイル)ではその数値を知ることはできません。ゆえに、初期生育をしっかりと観察していく必要があります。

* BLOF理論を提唱するジャパンバイオファームにも相談しましたが、今回は見送ったほうが良いと判断しました。
* 施肥後の想定値におけるphの値が7.6と高い理由としては、phの高いヒューマス、アルカリ性に振れる資材を投入する計画を立てたためです。これを目安値である6〜6.5に合わせるために、えひめAI(乳酸菌、酵母など)をはじめとした酸性に振れる資材を定期的に投入していきます。
* キレートとは、ミネラルイオンが2分子から3分子のアミノ酸で挟まれた状態のこと。ミネラルの吸収率が高まります。

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徳本 修一

トゥリーアンドノーフ代表取締役。消防士、芸能マネージャー、歌手、ITベンチャー役員を経て、子どもたちがおいしく安心して食べられる野菜を作るため鳥取に帰郷しトゥリーアンドノーフを発足。コメで世界を獲ったるで!(詳しいプロフィールはこちら)

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