なす(茄子)にまつわるアレコレ
こんにちは、和多瀬です。
8月も終盤、間もなく9月を迎えます。あとひと月もすればぐっと秋めいてきて、そうなると寒くなって冬を迎えて…… ちょっと気が早いようではありますが、7月から収穫の始まった有機千両なすは、寒くなってくる11月初旬まで収穫と出荷が続きます。
今日はその、なす(茄子)についてのお話。「おお、そんな野菜だったんだ!?」という驚きの情報は多分ありませんが、なすにまつわるアレコレを書いてみたいと思います。
原産地はインド、日本には奈良時代に
なすの原産地はインド東部と言われています。
日本には中国を経由してもたらされ、奈良時代(710〜794年)にはすでに栽培されていました。正倉院の古文書には、天平勝宝2年(750年)に藍園茄子を進上したとの記録があります。
なお、ヨーロッパには13世紀頃に伝わったと言われていますが、ヨーロッパでは普及しませんでした。話が少し逸れますが、日本では土地様々に品種を分化させた大根ですが、やはりヨーロッパでは人気が出ず、食されているのは二十日大根程度です。好まれる野菜が全然違うんですね。
日本人の生活や文化に浸透
奈良時代という遥か昔から日本で広く栽培され、食されてきただけあり、日本文化の中にも深く根付いているなす。
その例として「言葉」があります。「茄子紺(なすこん)」「茄子鐶(なすかん)」「茄子錠(なすじょう)」「茄子歯(なすびば)」など、色やかたちなどを表す単語に、なす(茄子)の名前が登場します。
また、なすを使った諺も生まれました。
一富士二鷹三茄子:一富士二鷹三茄子(いちふじ にたか さんなすび)とは、初夢に見ると縁起が良いとされるものを、めでたい順に並べたものです。
瓜の蔓に茄子はならぬ:瓜の蔓に茄子はならぬとは、平凡な親から非凡な子は生まれないこと、原因のないところに結果は生じないことの例えです。
秋茄子は嫁に食わすな:おいしい秋のなすは、もったいないから嫁には食べさせるなという姑の嫁いびりの言葉。反対に、なすは体を冷やす、あるい播種が少ないので子供ができないといけないから、嫁には食べさせるなという嫁を大切に思う言葉。由来は後者が有力であるとされています。
最近ではあまり見なくなりましたが、盂蘭盆会(うらぼんえ)には、なすに足を付けて馬をつくって精霊棚に供え、お盆が終わると川に流したりするなどの習慣もあります。
このように日本人に愛されたなすは、昭和30年頃までは果菜類(*)という野菜の分類において、日本最大の作付面積を誇り、およそ150種というたくさんの品種に文化し、日本各地で栽培され食された野菜でしたが、生食用に向かないなどの理由や食生活の平準化から、作付面積、品種ともに徐々に減少したようです。
なすの栄養素と効能
奈良時代に中国から伝わったなすは、その頃から、鎮痛や消炎のため、また血行促進や利尿作用を期待されて食されていました。
現代では、栄養素的にはビタミンKや葉酸、カリウム、食物繊維などを多く含み、がんや動脈硬化、高血圧の予防、コレステロールの上昇抑制などの効能があるとされています。
先に紹介した「茄子紺」という言葉にあるように、なすと言えば黒紫色の皮を真っ先に思い浮かべますが、この皮には、強い抗酸化作用を持つアントシアニン系の色素、ナスニンが多く含まれています。このナスニンがコレステロールの酸化を防ぎ、細胞の老化やがん化を抑制すると言われています。また、眼精疲労回復にも効き目があるとのこと。
だから、なすは皮ごとしっかり食べたいですね。
なすの保存方法
原産地がインドだけに、なすは高温多湿を好みます。新聞紙に包んでの常温保存、2〜3日中に食べ切るのがベストです。
室内が暑い、消費するまでに日数があるという場合は、個別に新聞紙に包み、野菜室で保存してください。冷えすぎたり、冷風が直接当たったりすると、低音障害を起こして傷みやすくなります。
参考文献:日本の野菜文化史辞典/青葉高、旬の野菜の栄養辞典/吉田企世子、新・野菜の便利帳/板木利隆
果菜類:果実を食用とする野菜。なす、きゅうり、トマトなど。