反収15トン、秀品率95%! 伝説のBLOFer 大谷武久氏に会ってきた
徳本です。
昨年からトゥリーアンドノーフの技術的指針にしている、有機農業を科学的に捉えるBLOF理論。その関係者から、愛媛県松山市に有機栽培のにんじんを、反(*)当たり15トン近く収穫するBLOFer(*)がいるという話を初めて聞いたとき、耳を疑いました。しかも、秀品率100%に近く、糖度も栄養価も非常に高いと。
* BLOFer(ブロファー)とは、BLOF理論を用いて野菜を栽培する農家のこと
* 反(たん)は尺貫法の面積の単位で、約1000平方メートル
僕たちの15倍の収穫量の農家がいる
反当たり何トンというのは、反収量ともいい、約1000平方メートル当たりの畑でどれくらい農産物が収穫出来たかを示す数字で、農業でも大切な指標の一つです。
農業はこの反収量によって収益が大きく変わります。
一般的なにんじんの反収量は2~3トン、レベルの高い農家でも5トン前後です。ちなみに僕たちトゥリーアンドノーフの去年の反収量は、1トンというお粗末な結果でした。つまり愛媛県の農家は一般の農家と比べて3~5倍、トゥリーアンドノーフの15倍というとてつもない反収量なのです。
当然、同じ面積の畑ならば、野菜がたくさん収穫できるほうが、売上も良くなります。単純に計算できない部分もありますが、反収量が15倍なら売上も15倍、ということです。経営の観点からも奇跡のような話でした。
その農家、大谷武久氏に会ってきた
その驚愕の反収量を実現している農家に会って、何が起きているのかこの目で確かめたい! いても立ってもいられなくなり、鳥取から5時間車をかっ飛ばし、愛媛県松山市の農業家・大谷武久さんにお会いして来ました。
元銀行員で、8年前(2008年)から本格的に有機農業を始められた大谷さん。果樹園を主軸に、野菜の生産にも取り組まれています。
太陽熱養生処理の前の土壌の水分量について、説明をしてくださる大谷氏。白い髭がとても印象的で見た目は仙人のようですが、科学的に有機農業を捉える知識とセンスは素晴らしいものがあります。
果樹園で採れる柑橘類も、やはり驚くほど収量が多いです。
食べさせていただいたのですが、実に美味い。
大谷さんの土づくりの礎となっている良質な堆肥を量産する堆肥場。
この堆肥を、通常では考えられない量を畑に仕込み、一気に分解させるという手法が大谷氏の技術のコアです。
堆肥の成分と特性の十分な理解と把握、適切な水分と温度による管理が求められます。これを少しでも間違えれば、野菜が全くできない、もしくは畑全てが病害虫の巣窟となってしまいます。
とにかくアクセルとブレーキとハンドリングの技術が絶妙で、言ってみれば、曲がりくねった細い農道をF1カーでドリフトしながら走り抜ける、そんな技術です。
視察を終えて考えたこと
有機農業は、地域資源(草や藁、竹、山の木々、畜産動物の糞尿など、地方ではごく身近にあるもの)を堆肥に変えて土に戻し、上手に循環させる土作りを継続的に行うという考え方が根底にあります。環境にできるだけ負荷をかけず、地域の特性を活かした、持続性のある農業です。
一方で、一般的な農法に比べて反収量が少ない、病害虫の影響を受けやすいなど、特に経営的観点から多くのリスクが指摘されています。
しかし、高度な技術が必要ですが、科学的根拠に基づいて有機物を土に戻し、農作物に還元していくことにより、安全で美味しい農産物がもの凄くたくさん収穫出来る、つまりもの凄く利益率が高い、既成概念とは真逆の事実を今回の視察でしっかりと確認することが出来ました。
大谷さん、果樹の出荷繁忙期にも関わらず、丁寧に説明・指導してくださり、本当にありがとうございました。今後ともご指導・ご鞭撻よろしくお願いします。