子どもたちが笑顔になれる野菜をつくりたい
徳本です。
今から約7年前、2008年頃、僕は東京で働き、暮らしていました。
当時、東京の東雲(しののめ)という開発中の湾岸地域のアパートに住んでいて、そこで初めての子どもを持ちました。多くの親がそうであるように、自分が守らなければならない存在ができて、初めて考えさせられたことがたくさんあります。
その中でもっとも大きなものの一つが、食についてでした。
2008年頃に暮らしていた、東京都江東区のアパート
東京での生活で抱いた不安
自分の子どもには、その環境で許されるかぎりの最良のものを与えたいと考えるのがふつうです。
暮らしていた団地のすぐそばには24時間営業の大きなスーパーマーケットがありました。深夜でも食品を購入できるのは便利でしたが、そこに並んでいた野菜は明らかに鮮度を失い、誰が、どんな環境で、どんな方法でつくったのかも分からないものばかり。これらを「子どもに与える」という視点でそれらを見た時、漠然とした、しかし大きな不安を感じた自分がいました。
そんな自分の不安など知る由もなく、子どもたちは食卓に並んだものを口にします。幼い彼らのからだは、まさにその食事によってつくられていくわけです。「本当にこのままでいいのだろうか?」その思いは日増しに強くなっていきました。
自分の幼いころの記憶
自分の子どものことや食について考えていると、決まって思い出す光景があります。
畑に立つ僕と祖母。じりじりと照りつける太陽、深い谷から吹き下ろされる風。採りたてのトマトを小川の美しい水で洗って僕に手渡す祖母。かぶりつく僕。口の中いっぱいに広がる野性味あふれるトマトの味。
祖母のつくったトマトのその強い滋味は、幼い頃に見た景色とともに鮮明に記憶に残っています。
自分の子どもたちにも、あの美味しさを知ってほしい。あの美しい景色の中で、思いっきり走り回って大きくなっていってほしい。
最初はただの回顧に過ぎなかった小さな思いは、次第に大きくなり、気がつけばほとんど衝動と言っていい、抑えるのが難しい強く大きなものになっていました。
築き、与え、受け継ぐ
思いを抑えることができず、2009年、ついに家族を連れて鳥取に帰ってきました。
しかし、だからと言って、食のすべてが安全になるわけではありません。自分の記憶に残っているトマトの味や景色が、そのまま残されているわけでもありません。自分の祖父母や両親が懸命に築き、僕たちに与えてくれたものを、今度は僕が自分たちの手で築き、子どもたちに与え、受け継いでいく必要があります。
それを実現するために、本格的に農業に取り組むために、TREE&NORFを始めたのは2012年。今年は2015年ですから、鳥取に帰ってきてから6年が経ち、TREE&NORFを始めてから3年が経とうとしています。
幼かった子どもたちも成長して大きくなっていますが、思いは同じです。僕は、子どもたちが笑顔になれる野菜をつくりたいのです。
自然、野菜、子ども
鳥取のような地方都市には、何はなくとも美しい自然はたくさんあります。
子どもたちの小さな足の下にあったコンクリートやアスファルトは、柔らかな土や緑地に変わりました。転ぶことを恐れなくなったのは子どもたちではなく、むしろ親である自分たちだったのかも知れません。
子どもたちと一緒に自然の中で気ままに遊びまわる時間は、何物にも代えがたいものです。
美しい自然の中で、新鮮で安全な美味しい野菜を、子どもたちと楽しむ。
僕の頭の中にあった絵を支えるこの3つのキーワードが、ハッキリしてきたのは今年に入ってからです。今後のTREE&NORFは、この3つのキーワードを大切にし、また事業の中心に据えて活動していきたいと考えています。
その具体的な内容については、また今度。