2015年の回顧、そして未来へ向けて
徳本です。
明日2015年12月30日は、トゥリーアンドノーフ、今年最後の出荷日です。
年末に掛けて凍てつく寒さの中、早朝から、だいこん、白ねぎ、にんじんの収穫出荷作業をテキパキとこなしてくれるスタッフには本当に日々感謝です。
私たちの畑をいつも見守ってくれている鷲峯山(じゅうぼうざん・標高920m)は、数日前から雪化粧をしました。
2015年を回顧する
2015年も、本当に色々なことがありました。
自社ファームの生産拡大にあらゆるリソース(経営資源)を集中すべく、今年の3月末、2009年より始めた鳥取のこだわり食材の加工販売事業「わったい菜」を終了しました。終了に辺り取引先を回らせてもらう中で、多くの人々の生産努力と誠意が、わったい菜という事業を支えてくださっていたのだと痛感しました。
夏の主力として据えていたじゃがいもの収量が思うように上がらず、注文くださっていたお客さんに多大な迷惑をかけました。また炎天下で働くスタッフたちも疲弊しました。畑で途方に暮れていると、迷惑をかけた取引先のバイヤーから「これくらいで挫けるなよ。頑張れ!」と励ましの電話をもらい、ひとり畑で、泣きました。
小さな組織ですが、物事が共有されない、意思疎通が図れない、生産性が上がらないという状況にも陥りました。共通言語で目標を共有し、そこに向けてスタッフが有機的に関わり、成長していける環境や仕組みづくりに奔走しました。そして、相手の立場でものを考えるということの大切さと難しさを痛感しました。
農業法人として最も致命的な「野菜が思うようにつくれない」という問題の解決を図るため、全国の産地を巡って様々な人々と会い、ありとあらゆる情報を見聞きし、今後の技術的指針にたどり着くことが出来ました。
生産現場で起こりうる全ての事象において、何故そうなったのか? その原因と解決策を明確に打ち出せること。そのアプローチが出来るのは科学的観点以外にありません。そこを基礎にIT化含め、あらゆる角度からイノベーションを模索していければと考えています。
そして、未来へ向けて
今年10月にTPPの大筋合意がありましたが、近い将来WTOの枠組みで世界中の農産物が行き来する時代を迎えていきます。日本は戦後農業の大きな転換期を迎えつつありますが、高齢化に伴う農業現場の疲弊は加速度的に蓄積・拡大し、現実を反映しない政策や小さなコミュニティ活動だけでは追いつかない状況になっていきます。
また国内の人口減少は、あらゆる分野のマーケットに変化を促していきますし、財源分配のあり方もより議論が切迫したものになってくると思います。
水も石油も、食べ物も環境も、希少資源が商品として流通し、人々の暮らしに寄与してきました。しかしそこからは常に何らかの不均衡が生まれ、どこかで生じる戦争や飢餓の原因となりました。そしてこれは現在も続いている事実です。
私たち農業の世界では、例えば野菜を育てるために欠かせないリンやカリの原料は、海外のリン鉱石やカリ鉱石に由来しているものが多く、ほとんどを輸入に依存しています。特にカリ鉱石については、大国の買い占め、資源の枯渇などを理由とした高騰が近年、指摘されています。地球規模の気候変動も、着実に食料生産においても影響を与え始めていると言えます。
私たちの有機農業が目指すところは、持続的且つ安定的に高品質な野菜をマーケットの変化に合わせて供給し続けること、それらを実現出来る技術の構築と体系化にあります。土作りに必要な資源を地元または近圏で獲得し、成果物としての野菜を供給することは、中長期的に見ると経済合理性と安定性の高い事業になり得ると考えています。
これから更に複雑化を深めるグローバリゼーションの中で、疲弊する地方都市・鳥取から何を発信し、次世代に何を残し、伝えていけるのか?
地域資源を活かした競争力のある強くて持続的な産業を育てていくこと。近代農業の在り方を見直し、日本の豊かな水と農地を活かした新しい農業のカタチをつくり上げることは、結果として自然崇拝・農耕民族日本人のアイデンティティを活かすことに繋がると確信しています。
「一人でも多くのお母さんと子どもたちに、健康で美味しい野菜を届けて行きたい」 事業家として、また一人の父親としての目標でもあります。
今年一年、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。
皆さま、良いお年をお迎えください。