食品ロス削減推進に関する法律の成立に寄せて

徳本です。

先日、「食品ロスの削減の推進に関する法律(以下、「食品ロス削減推進法」)が成立しました。

僕たちトゥリーアンドノーフもコメや野菜など食品をつくる事業者であり、サプライチェーンに属す立場として、強い関心を持ってこのニュースを受け止めました。

日本は、食品ロス大国

日本は食品(に限りませんが)の輸出額が輸入額に対して非常に低く、2012年の資料では、世界第一位の農産物の輸入国となっています。

自分たちでつくらず輸入しているにも関わらず、しかしその食品の廃棄=食品ロスの量は、年間646万トン(平成27年度推計)で、これは国連による食糧援助量(約320万トン)の2倍に当たります。この廃棄量を日本の人口で割ると約51キロで、日本人が1年間で消費するコメの量とほぼ同じです。

スーパーやコンビニ、レストランなどの外食店、一般家庭から出る食べ残し(食品ロス)=生ゴミの廃棄には、全国でおよそ1兆円の税金が使われている(*1)と推計されています。

こうした数字を見ると、「なんてことだ! 直ちに問題を解決するために行動を起こさないと!」と感じるわけですが、僕たちが1日に出すゴミの量はそれほど多くないため、また徴収される税金は給料から天引きされていることが多いため、ふだんの生活でこの問題をかじることはなく、よもや自分の生活がそれほど大量の食品ロスを生み出し、多額の税金が使われているとは気づきにくいのです。

だって、1兆円ですよ。1兆円というお金があれば、消費税を上げなくても幼稚園・保育園の無償化を実施しても、まだまだお釣りがきて、大学の無償化は無理でも、高校くらいまでならラクに無償化できるほどのお金です。

僕たちはどんな行動がとれるか

成立した「食品ロス削減推進法」は、政府が食品ロス削減の基本方針を策定し、自治体には具体的な推進計画を作る努力義務を課す、といった内容であり、改善に向けた具体的なものはこれから決まっていくことになります。

こうした問題で先を行っている欧州、例えばフランスでは「食品廃棄禁止法」では、まだ食べられる食品を廃棄すると3750ユーロの罰金が課せられます。

日本でここまでできるかどうかは分かりませんが、フランスなどの欧州でこうした罰則規定のある法律が成立する素地として、そもそも国民の問題に対する意識が高い、という指摘があります。

つまり、法律があるから、罰金を払わなくてはいけないから食べ物を捨てない、のではなく、食べられるものを捨てることは問題だと認識して行動している、というわけです。

今回の日本での「食品ロス削減推進法」の成立は、食品ロスに関する僕たち日本人の意識を高めるキッカケになることは間違いありません。


意味もなく賞味期限が遠い製品を選ぶ消費行動も減ってほしいですね

では、一消費者としてではなく、僕たちトゥリーアンドノーフは食品に関する一事業者として何ができるでしょうか。

ものすごくふんわりした話になってしまうのですが、僕たちの新しいテーマである捨てられない野菜をつくることだと考えています。

捨てられない野菜をつくる

では、「捨てられない野菜」とは、どういう野菜でしょうか。

1) 食べて美味しく、 2) 栄養価が高く、 3) 他の同じ種類の野菜よりも少し価格が高い。そんな野菜ではないでしょうか。

1)食べて美味しく

野菜は食べ物ですから、なにはさておき、美味しくないといけません。どれだけ体に良くても、美味しくなければ「また、トゥリーアンドノーフの野菜が食べたいなぁ」と消費者が思ってくれることはありません。

2)栄養価が高く

消費者の野菜に対する一般的なイメージには、「野菜は体に良い」「健康に良い」といったものがあります。医薬品や機能性食品ではないので、効能や機能を謳うことはありませんが、漠然としたイメージだけでなく、僕たちがつくる野菜を食べて本当に元気に、健康になってほしいと考えています。

そのためには、その品種本来の栄養価を十分に備えた野菜をつくる必要があります。

データに基づいた科学的な土づくりや肥培管理などを通じて、栄養価の高い野菜をつくることは僕たちの目標であり、現在取り組んでいる挑戦です。

3)少し価格が高い

上記の2点……美味しく、栄養価の高い野菜を安定的に継続的につくることができるようになれば、品質に見あった価格にすることができると考えています。

価格を品質にあったものにする=価格を上げることは、品質の高い野菜を継続的につくるために必要であると同時に、安易な廃棄を減らすことにも寄与します。

外食でも食料品の小売でも、低価格であることが簡単に廃棄される大きな理由の一つであるという指摘があります。値段の高い安いがモノを大切にするしないに影響するのは、残念ながら事実だからです。

そうした意味でも、野菜の価格を高めていきたいと考えますが、単に高いだけでは誰も選んでくれません。美味しくて、栄養価が高い野菜だからこそ、値段が高くても手にとってもらえるはずです。

繰り返しになりますが、食べて美味しく、栄養価が高く、他の同じ種類の野菜よりも少し価格が高い。決して安易に廃棄されない

そういう野菜をつくることが、食品ロスを削減するために僕たちにできる一番大きなことだと本気で考えています。


現在栽培しているサニーレタス

「食品ロス削減推進法」に関して、全国の自治体がどのような目標や具体的施策を打ち出してくるのか、注目して待ちたいと思います。

こんな本を読んで勉強しながら。

*1 5000〜6000億円とする別の推計もあります。

参考にした情報、資料、記事一覧
食品ロスの削減の推進に関する法律案要綱
食品ロスの削減の推進に関する法律 概要(PDF)
日本の食糧事情(農林水産省 平成27年)(PDF)
食品ロス削減関係参考資料(消費者庁 平成30年)(PDF)
・環境省「食品廃棄物の現状
・農林水産省持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)
クリスマスケーキ 大量廃棄の実態 一日500kgがブタのエサに 家庭ゴミにはホールの半分が捨てられ
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「世界一美しいまち・京都」が取り組む「食べ残しゼロ活動」
・The Asahi Shimbun GLOBE+ 「捨てたら罰金 食品ロスを禁じたフランスの挑戦


徳本 修一

トゥリーアンドノーフ代表取締役。消防士、芸能マネージャー、歌手、ITベンチャー役員を経て、子どもたちがおいしく安心して食べられる野菜を作るため鳥取に帰郷しトゥリーアンドノーフを発足。コメで世界を獲ったるで!(詳しいプロフィールはこちら)

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