有機農業に必要な3つの視点

大変ご無沙汰しております。徳本です。

農事組合法人 八頭船岡農場の西根祐輔さんとは、先週末8月29日、30日に鳥取大山のホテルで開催された鳥取県夏季農業講座で初めてお会いしました。

西根さんは国外の経験も豊かで、長野県のトップリバーという大規模な農業生産法人で主力として6年間活躍し、今年2月から八頭船岡農場の野菜生産グループ長として従事されています。

1泊2日で行われる講座の夜は親睦会となるので、西根さんと色々と話をすることができました。

農業を化学でとらえる知識と経験値のレベルの高さに驚き、ぜひTREE&NORFに来てレクチャーして欲しいと熱願し、講座の翌週に早速に来てもらったわけです。

西根さんのレクチャー

まずは作業場内で、我々が使用している肥料、土壌改良剤、微生物資材、また過去の土壌データなどを元に、農業を化学(元素記号)で捉えることの重要性、ミネラルの考え方と活用、土壌データの読み取り方などの基本をレクチャー。

その後、実際に作物が育つ畑に移動し、スタッフと意見交換を行いました。

白ネギ畑での様子。土と根の観察やミネラルを活用した今後の管理手法などを学びました。

TREE&NORF×八頭船岡農場西根さん

千両ナス畑でも、より長くより多く収穫する為の具体的な手法について話し合いました。

TREE&NORF×八頭船岡農場西根さん

移動中もスタッフから質問が途切れることはありません。

TREE&NORF×八頭船岡農場西根さん

じゃがいも(メークイン)の収穫が予定の3割以下という、悲惨な生育状態になったほ場にて。

TREE&NORF×八頭船岡農場西根さん

土中に微生物がほぼいないことが明白に。如何に時間を掛けず良質な土壌に変えてにいくかついて様々なアプローチを検討。

今年冬の主力となる大根畑にて。害虫を有機的に抑止する為の手法を話し合いました。

TREE&NORF×八頭船岡農場西根さん

日本中の強い農業法人とネットワークを持ち、それらの手法を徹底的に化学的に落とし込み、机上の知識では無く、現場で実践できる手法を自分で考え実践してきた西根さんのレクチャーは、スタッフにとってとても良い刺激になりました。

その西根さんも、有機での大規模農業は本当に難しいと言っていましたが……。

最初の何年かは野菜が全く出来ないという話も良く見聞きします。

有機農業はとにかく失敗する。

野菜は、人間が美味しく食べれる為に品種改良を続けきた植物。そのため、自然界の中では非常に弱い植物であり、人間が常に見守り、必要なものを足し引きし、また病害虫から守らなければ、野菜が育つことはほとんどありません。

化学合成農薬や化学肥料を使用する慣行栽培においては、化学メーカーや種苗メーカーを中心にそのメカニズムが化学的に長年研究されていますが、有機農業においては、明確な根拠のない手法や考え方がまだまだ巷に溢れています。

土づくりに必要な3つの視点

農業は「土づくり」がもっとも重要ですが、それをする上で、物理性、化学性、生物性と3つの視点が必要であるとよく教科書には書いてあります。

物理性はある程度人間の目で確認や修正が行えるが、化学性は数字と元素記号に落とし込まないと正確に把握することが出来ません。そのため、おざなりになることも。しかし、失敗した原因が何だったのかということを適切に見極め、修正していくために、化学的見地は必須です。

生物性は、有機農業の真骨頂、生物多様性の世界であり、これはこれで適切な知識経験を元に有益な資材を活用していく必要があります。

集合知を活かす

例えば1年1作の作物は10年経験しても10回しか経験できない、だから農業のスキルアップには時間が掛かる、と言われてきました。

しかしこれからの時代は違うと考えています。

有機農業を営むのらくら農場の萩原さんのプレゼン動画でも出てきたキーワード「集合知」というキーワード。

集合知がもっとも活かされるフィールドは、ITです。

閉鎖的とされる農業の分野においても、近い将来、気候や土壌、品種や使用資材、単収、稼働時間などの膨大な情報=ビッグデータが、日本はもとより世界中から集まりはじめるでしょう。

これによって、個人や家族、地域など限定されていた経験と知恵が正しく共有されれば、より適切で合理化された有機農法がどんどん実践されていくはずです。有機農業がもっとも経済合理性・持続多様性の高い農業として、産業として、飛躍していくことになるのです。

TREE&NORFの構想は壮大であるが故に、ここ数年はまず基本をしっかり固める時期。

西根さんの話を聞くTREE&NORFスタッフの目が印象的でした。何か少しでも自分の血肉にすべく、ほとんど食らいつくようなほど、真剣な目をしていました。日々現場で格闘し、悩んでいるからこそ、この姿勢が生まれたのだと思います。

根拠も仮説もない、結果が出ても正しいのかどうかわからない、先の見えづらい作業の継続は本当に苦しいものです。だからこそ、現場で起るあらゆる事象の理由をデータ化し、共有していく必要があります

日本で最強・最大の農業法人への道のりは、まだまだ始まったばかりです。


徳本 修一

トゥリーアンドノーフ代表取締役。消防士、芸能マネージャー、歌手、ITベンチャー役員を経て、子どもたちがおいしく安心して食べられる野菜を作るため鳥取に帰郷しトゥリーアンドノーフを発足。コメで世界を獲ったるで!(詳しいプロフィールはこちら)

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