佐久ゆうきの会(長野県佐久地方)を視察訪問
徳本です。
2016年9月の視察旅行二日目、午前中の群馬県昭和村の野菜くらぶに続いて、長野県佐久地方佐久ゆうきの会を訪ねました。
佐久ゆうきの会
長野県佐久地方は、佐久市を中心とした地域で(*)、人口およそ20万人。この日の午前中にお邪魔した野菜くらぶのある群馬県との県境に位置しています。
佐久ゆうきの会は、この長野県佐久地方で有機野菜の生産を行っている、若手生産者(20〜30代中心)の生産組合。関東に本社を置く取引先に、会っておくべき生産者を尋ねたところ、「徳本君たちがやっている内容や方向性なら、是非、佐久ゆうきの会に会っておいたほうがいい」と紹介され、足を運んだわけです。
横八ファーム
同会代表の真木聡志さんは僕と同い年の40歳ですが、農業経験は20年近いベテランです。
真木さんが経営する「横八ファーム」の作業施設で待ち合わせをし、まずは1時間ほど栽培技術や管理手法などについての話を伺いました。
10年以上前からBLOF理論をベースに現場と向き合いながら、常に改善を繰り返し確立していった技術論や管理手法は、BLOF1年生の僕たちにとっては目から鱗の連続。僕たちがこの半年間取り組んできて現場で感じた疑問や悩みに対しても明確で論理的な答えを持っていて、何を聞いてもスコーン! スコーン! と答えが頭に分かりやすく入ってきました。
その後、栽培するミニトマトのハウスと作業設備などを見学しました。
ミニトマトのなり方は、まさしく有機で高品質・多収穫の模範となるような生育状況で、あんなに連なるトマトはこれまで見たことがありません。しかも、食べて美味しい!
Farmめぐる
その後、佐久市街地から車で30分ほどの春日という地域にある、同会メンバーの吉田典夫さんが運営する「Farmめぐる」へ。
吉田さんは元々国家公務員で、4年前からこの地域で就農し現在に至ります。真木さん曰く「吉田さんは栽培センスが抜群に高い」。その言葉どおり、畑には素晴らしい野菜たちが生育していました。
30a(アール)の面積に栽培されているいんげんも鈴なりに実り、収量も一般的な栽培とくらべて3倍以上とのこと。
しかも聞けば、この畑は元々雑木林。重機を使って自ら開墾し畑にしたとか。
なぜなら、標高900メートル近くあるこのエリアは高原野菜の一大産地。鳥取とは違い、基本的に農地に空きが出てくることは非常に稀なのだとか。
長年堆積した落ち葉などが分解され土の栄養素となり、深い作土層に根をしっかりと張り巡らせて育つ野菜は、ほとんど肥料を入れなくても素晴らしい生育を見せます。もちろん理論的にしっかりと理解したうえで、狙って開墾されたということです。
太陽熱養生処理も丁度行われていて、ノウハウを伺うことができました。
夜は、真木さんが佐久ゆうきの会の幹事の皆さんとの懇親会の席を用意してくださり、佐久市内で親睦会を行いました。
真木さん、吉田さんをはじめ、有機かぼちゃ25ヘクタールも栽培されている大塚悠さん(20代後半と若い!)、メディア業界出身の田嶋克次さんが参加され、皆さん本当にキャラが濃くて、楽しい話が尽きませんでした。
次の世代へとつなぐための農業
今回の視察で印象的なエピソードがあります。
横八ファームからFarmめぐるへと移動する車中、有機農業の未来について真木さんと少し話をしました。
真木さんは「僕たちが有機農業をやる理由は、次世代、さらにその次の世代の人間が豊かに持続的に生きていくための仕組みが必要だからです。しかしそのためには、思想や哲学的な有機農業ではなく、科学的見地に立ち、テクノロジーも取り入れていく必要があります」と言い切りました。
“目指すべきビジョンがあり、実現するための有効な手段に、科学的有機農業はなりえる”
同じビジョンを持った新しい世代が、科学的有機農業の可能性を信じて、次の未来を切り開こうとしている! 僕がふだん、常に考えていることを、鳥取から遠く離れた長野県佐久で聞き、とても驚いたと同時に興奮を覚えました。
夜の懇親会の乾杯の音頭で、真木さんが「これからの日本農業の未来へ乾杯!」と発声されました。まさしく佐久ゆうきの皆さんとの出会いは、未来への扉を確実に開き、差し込んだ強い光のようなものを感じた、何か運命的とも思えるものとなりました。
皆さん、最高に刺激的で、楽しい時間をありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
* 一部敬称略
* 日本でもっとも海から距離のある地点(北緯36度10分25秒、東経138度35分1秒)を含む