今後の展開と北海道視察旅行

徳本です。

岡山県や広島県を中心に大きな被害をもたらした豪雨の後、全国的に一斉に梅雨明けしましたが、鳥取は本当に雨の降らない日が続いています。

アブラムシによる大きな被害、長雨・大雨による病気の拡大などの影響で、6月から7月前半にかけて、予定していた収穫量を大きく下回ってしまったため、本来の計画では抑えめにしていた7月後半から8月の栽培量を増やすことにしました。

続く猛暑日が小松菜の生育に影響

しかし、この日照りです。

小松菜は、天気予報を参考にして、翌日以降に雨が降ることを前提に播種(=種まき)します。播いた種が芽を出すには、水が必要だからです。

しかし、連日晴天の予報が続き、雨を待っていてはいつまで経っても播種ができませんので、手潅水、つまり用水路からポンプで水を組み上げ、ホースを伸ばして手で水やりしています。

この作業は比較的気温の低い早朝、夕方しかできませんので、手の回らない圃場(畑)もあり、生育が心配される状況です。

適地適作をもう一度考える

僕たちのように野菜を露地で栽培している以上、天候の影響は避けられず、コントロールできない部分も大きいのですが、自分たちの経験に加え、全国の農業家たちのアドバイスや意見を参考に、できることは事前に準備し、対策を講じてきました。

が、アブラムシの大発生や長雨による病気の蔓延、そして今回のようにひと月以上続く可能性のある干ばつ……。度重なる困難は、精神的にも肉体的にも僕たちに大きなダメージを与えます。

地球温暖化による気候の変化もあると思いますが、しかし、同じような問題は昔からこの地で営農する人たちを悩ませてきたはずです。かつては、収穫ができない=生死に直結するので、より深刻だったと思います。

自分たちがいる土地の気候や風土に抗ってもダメ、自然に寄り添うことが一番大切。

おそらくこうした考えから、適地適作が生まれてきたと考えられます。僕たちが営農する鳥取市気高町においては、それは水稲、つまり水田での米作りでした。

広がる水田を眺めながら、今後、増えてくるであろう離農者と遊休農地、それを僕たちトゥリーアンドノーフが引き受けて、事業として成立する農業を実践していくために、いま取り組んでいる小松菜を拡大していくべきなのか、それとも、この適地適作を最優先に取り組んでいくべきか……。

今、将来を見据えて考えています。

北海道のプロ農家を視察

適地適作、そして増えていくであろう遊休農地の有効活用事例の勉強のため、2泊3日と駆け足でしたが、7月中旬、北海道のプロ農家の視察に行ってきました。

声をかけて下さったのは、鳥取県八頭郡で営農されている、全国的なネットワークを持つ著名な農業家、田中農場さんです。

この視察旅行の大きな目的は、1)プロ中のプロである柳原農園、柳原農園の視察と、2)「北海道土を考える会」に参加し、伝説的農業家である勝部征矢氏の講演を聞くこと、この2つでした。

柳原農場で子実ともうろこしについて聞く

まず、小麦や大豆などの農産に加え、畜産も営む柳原農場を訪問。

今年アメリカの農業を視察していたこともあって、スケールの大きさには少し慣れていましたが、しかし、同じ日本とは思えないスケール感は、やはりスゴイです。

代表の柳原孝二さんは、「北海道子実コーン生産組合」の組合長で、水田を活用した子実とうもころし生産を推進されている方(*1)。

子実とうもろこしは、養鶏用の飼料や、スナック菓子やコーンフレークなどの食品の原料として、日本国内で年間およそ1500万トンの需要があります。この量は、国内で消費される米の2倍以上という膨大なものですが、実にその99.9%が輸入です。

子実とうもろこしの特徴は、なんと言っても面積あたりの労働時間の少なさ。小松菜の150時間前後に対して、子実とうもろこしはなんと1〜1.5時間と100分の1以下です。

さらに、輪作(*2)による野菜の連作障害(*3)の防止、土壌改良(*4)にも役立つということで、先にも書いた、今後増えるであろう遊休農地の活用方法の一つとして検討できないか、と以前から考えていたわけです。

今回、この子実とうもろこしの国内栽培を推進する柳原さんと直接話ができるということで、この訪問を本当に楽しみにしていました。

実際に話を聞き、関連施設を見せてもらうと、栽培をはじめるには解決すべきたくさんの課題や、それなりの投資も必要だということが分かりましたが、大いなる可能性も感じました。


柳原農場、田中農場のみなさんと、巨大な農機の前で

それにしても、柳原農場の柳原さんの作物や栽培方法についてはもちろんですが、農機や農薬などに関する知識や技術の高さ、深さ、感度の鋭さや幅広さには驚かされっぱなしでした。

同農場には全国の名だたる農業家がひっきりなしに視察に訪れるのですが、それも分かりますね。

勝部征矢氏の講演

もう一つの大きな目的は、北海道のプロ農家のメンター的な存在である勝部農場 勝部征矢氏の講演を「北海道土を考えるかい」で聞くこと。

勝部征矢氏は、北海道栗山町にて180ヘクタールの面積で小麦を栽培している勝部農場の代表です。

同農場は、連作はできないと言われる小麦を、自前の基盤整備や特注プラウによる超深耕な土づくり、徹底した適期作業によって、なんと50年以上連作しており、しかもその収穫量は、同町の平均反収300kgの倍、600kg以上ですから驚くほかありません。

講演では、勝部氏の先見性、自分が信じたものをやり抜く胆力にすさまじいものを感じましたし、その根底には、しっかりとした経営精神がありました。

講演の舞台となった「北海道土を考える会」は毎年定期的に開催されていて、北海道を中心とした会員(ほぼ農家か、農業関係者)が多く集う、かなり大きなイベントです。

僕としては、勝部氏の講演に加え、この会に参加するために全国から集まった高レベルな農業家たちとの交流も、視察旅行の大きな目的でした。

たくさんの方と話ができ、大いに刺激をもらいました。

国際農業機械展

4年に一度、北海道で開催される国際農業機械展にも足を運びました。

全体の傾向としてはやはり、自動化、効率化、省力化がキーワードになっているようです。

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適地適作を踏まえた栽培作目の選定、農業資材や機械に関する知識や技術、世界の動向や情報への感度、経営哲学や理念……、あらゆることを吟味し、決め、しっかり実践していかなければ、農業で食べていくことはできない。

北海道視察で、あらためて教えられました。

*1 柳原さんがまとめられた子実とうもろこしについての資料は、農林水産省のHPで読むことができます
*2 輪作:同一の畑で、一時期に一種類、異なる野菜を順番に栽培すること
*3 連作障害:同じ畑に同じ野菜、または同じ科の野菜を連続して栽培することを連作といいます。連作を行うと、その野菜を攻撃する害虫や病原菌が増えたり、土壌中の特定の養分が不足して野菜が健康に育たなくなります。これを連作障害と言います
*4 土壌改良:子実とうもろこしは土中深くに根を張るため、畑の排水性改善が期待できます


徳本 修一

トゥリーアンドノーフ代表取締役。消防士、芸能マネージャー、歌手、ITベンチャー役員を経て、子どもたちがおいしく安心して食べられる野菜を作るため鳥取に帰郷しトゥリーアンドノーフを発足。コメで世界を獲ったるで!(詳しいプロフィールはこちら)

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