2019年の挑戦について – 適地適作が最も大切
徳本です。
前回は、2018年に僕たちが直面した問題のうち、特に影響の大きかった「夏の大旱魃」と「秋の市場崩壊」について書きました。
肉体的にも精神的にもどん底まで落ちた僕たちがたどり着いた言葉が、適地適作でした。
適地適作とは、「その土地の気候風土や、社会的・文化的条件に最も適した農作物を栽培すること」です。
これに逆らっては、いかに技術を高めようが、設備投資をしようが、農業という事業はうまくいきません。
鳥取県東部の適地適作はコメ
適地適作という観点で、あらためて自分たちが農業をやっている鳥取県の東部地域を見渡してみると、多くの農家がコメをつくっていることに気づきます。
正確には最初から分かっていたんですが、なぜ彼らがコメをつくっているのか、という理由が見えてきたわけです。
コメづくりは、鳥取県東部の気候風土に適しているのです。
おそらくかつては、僕たちのように野菜づくりに取り組んでいた農家もいたはずです。
しかし、曇天が多いため日照時間が少なく、湿度が高い、つまり病害虫が発生しやすい環境が、その土地の気候風土そのものだとしたら。
野菜づくりを止め、より合理的な判断、つまりその土地にあった作物であるコメづくりにシフトしていったことは想像に難くありません。
2019年からは水稲に挑戦します
とはいえ、野菜づくりを止めるわけではありません。後述しますが、昨年まで小松菜など3品目に絞っていた品目を20品目まで増やします。
それに加えて、将来のトゥリーアンドノーフの事業の主軸となるよう、コメづくり、つまり水稲を今年から事業に取り入れます。
大きな理由の一つとして、近い将来、高齢化などによって多くの農家が離農し、使われない農地がたくさん出てくることが見込まれていますが、これらの農地を引き受けるためです。将来的には鳥取県東部において、300ヘクタール以上の水田を集積したいと考えています。
水稲は、栽培面積の規模を拡大することで利益を出す農産物ですから、その性質とも適合します(とはいえ、ただ面積を大きくすれば儲かるという時代ではなく、積極的な技術導入や組織改革、マーケティングやブランディングによる売価の向上や安定化などを進め、生産性をドンドン上げていく必要がありますが、それについてはまた別の記事に書きます)。
一方で、「引き受けた農地でも野菜つくれるじゃないか」という意見もありました。僕たちのルーツは野菜づくりですから、これもうなずける意見です。
ですが、もともと水田は水が溜まるように作られています。水はけの良さが求められる畑に転用するのが難しい場合が多く、湿害や病害虫のリスクも高まります。
もちろん、乾きの良い転作に向いた水田も存在するので、一概に言えるものではありません。
しかし、個々の農地の特徴とは別に、山陰地方に属す鳥取県は日照時間が短く、視察等で見てきた他産地、例えば地理的には近い山陽側の圃場と比べても乾き具合の違いは明らか。こうした点も、適地適作に含まれます。
画像出典:キラキラごはん^_^ゞ
以上のことから、僕たちが活動する鳥取県東部では転作に好適な圃場は少ないと判断し、畑への転用ではなく、田んぼとして引き受け、水稲を実施するという判断に至りました。
野菜づくりにも引き続き挑戦します
先述したとおり、水田に向いた気候風土の鳥取県東部では本当に「良質」な畑は希少です。
僕たちは幸いにも、鳥取県気高町逢坂という良質な畑作地帯をかなり集積できましたので、ここでは高品質な野菜に特化し、新しい技術も積極的に取り入れながら、高く売れる野菜をつくっていく計画です。
気高町逢坂の黒ボク土の畑
上でも少し触れましたが、今年は栽培する野菜を20種に増やします(詳細は、「野菜について」のページをご覧ください)。
もちろん、すべての品目をこれまでの小松菜のように年間のべ20ヘクタールという規模で栽培するわけではありません。
ノウハウを十分に蓄えることができた小松菜を中心とし、その他の品目は試験栽培という位置付けです。数年かけて、どの野菜が適地適作なのかを主眼として、ビジネス面にも着目しながら選別し、最終的に数品目に絞り込む予定です。
野菜を栽培するにあたって、これまで掲げていたテーマ「一人でも多くのお母さんと子どもたちに、安全で美味しい野菜を届けます」を、今年から「私たちは人を元気にする野菜をつくります」に変更しました。
これについても後日、別途ブログで説明したいと思います。