僕たちが「今更」お米をつくる理由(前編)

徳本です。

先日公開した「2019年の挑戦について」で、今年から米をつくることを表明しました。

それに対して、「なぜこれまで野菜づくりをしてきたトゥリーアンドノーフが米を?」「今更米づくりして勝機はあるの?」といった驚きの声は少なくありませんでした。

そこで、なぜ僕たちが「今更」お米をつくるのか、その理由を2回に渡ってブログでお伝えしていきたいと思います。

主な理由としては、以下の4つ。

  1. 適地適作
  2. 大規模化と時流
  3. ITとロボティクスの導入、自動化
  4. 品種と技術

前編では、最初の3つをご紹介していきます。

適地適作

まず、今年の目標を掲げる記事にも重要な点として書いた「適地適作」について。

米は鳥取県東部地域にとって適地適作である、その根拠として、鳥取県は畑作よりも圧倒的に水稲農家が多い、というようなことを書きました。

少し、視点を上げてみたいと思います。

鳥取県の米の生産量は約6万5000トン。これは日本全体で見ると36位と、何ともビミョーな位置。1位の新潟県の61万1700トンのおよそ1/10にとどまっています。

都道府県別に見ると、2位は北海道(58万1000トン)、3位は秋田県(49万9000トン)で、以下、山形県、茨城県、宮城県、福島県、千葉県、栃木県、岩手県と続きます。米を多くつくっているのは関東以北という感じでしょうか。

米の収穫量が多い順に、都道府県別のヒートマップを作成してみました。

こうして見ると、東北など北関東以北に上位が集中、西にいくにしたがって収穫量が少なくなっているのが分かります。

東北や北陸などの米の産地は、豊かな水源に加えて台風や水害が少ないことが有利に働き、寒さに強い品種が開発されてたことで米の産地としてより強くなっていったと考えられます。

逆に西日本、特に太平洋側の地域ではちょうど米が成長してくる時期に台風が襲来するリスクが高く、逆に台風が来なければ渇水の危険性が高まるため、基幹産業としては敬遠され、産地化しなかったと思われます。

さらに、稲作に適した広い平野があるかどうかも産地化の重要な点と考えられます。

まとめると、日本の米の産地に共通する条件としては、次の3つになります。

豊富な水

台風や水害の少なさ

広い平野部

これらの条件を鳥取に当てはめるとどうでしょうか。

鳥取県は西日本に属してはいますが、台風が直撃することは希。しかし、雨がよく降るので水は豊かです。

ところが中国山脈と日本海に挟まれていて平野部が少なく、広い水田で効率的な米作りができません。これが鳥取県において稲作が産業として発展しなかった、収穫量が下位となっている理由ではないかと想像します。

しかし、平野部が狭いと言ってもそれは都道府県単位で見た場合であって、僕たちのような一農業法人にとっては十分な広さがあるわけです。

豊富な水

台風や水害の少なさ

(僕たちにとっては)
広い平野部

しかも、それが今後、時流に乗って、加速度的に増え広がってくることが想定されるのです。

大規模化と時流

稲作を儲かる事業にするには一定以上の規模で効率的にやっていく必要があります。

極端な例ですが、だだっ広い平野部で巨大な専用機械を投入する稲作と、小さな棚田で人力で行うそれとでは生産性に雲泥の差が生じます。


大型機械の導入が不可能で、畦畔の草刈りが困難な山あいの棚田(©鳥取県

つまり僕たちが今後、稲作でしっかり儲けるためには、大規模に効率的にやっていく必要があります。

今年、僕たちトゥリーアンドノーフが米を栽培している水田はおよそ7ヘクタール。これを2025年までに300ヘクタール以上に広げたいと考えています。

実に40倍以上の拡大となりますが、実現可能でしょうか。

ニュースなどでもよく言われていることですが、農業人口は高齢化を主な理由としてどんどん減っています。

農林水産省が発表している「農業労働力に関する統計」によると、平成22年に260万人いた農業従事者は令和元年(平成31年)には168万人、とおよそ三分の二に減少すると推定されています。

農業は頭も使う必要がありますが、やはり体力がないとできない仕事。70才、80才の農業従事者が年齢を理由に離農し、使われない水田が増えてくると推定されているのは、当然のことだと思います。

鳥取市の農業就業人口統計データを見てみましょう。

年齢
(10才階級)
2010年 2015年 差分(人数)
2010 vs 2015
人数 割合 人数 割合
15~19才 93 1.28% 15 0.25% -84%
20~29才 110 1.52% 46 0.77% -58%
30~39才 105 1.45% 115 1.92% 9.5%
40~49才 161 2.22% 113 1.89% -30%
50~59才 666 9.19% 407 6.81% -39%
60~69才 1,868 25.79% 1,941 32.49% 4%
70~79才 2,781 38.39% 1,940 32.47% -30%
80歳以上 1,460 20.15% 1,398 23.40% -4%
合計 7,244 5,975 -21%

これを見ると、以下のようなことが分かります。

  • 2010年から2015年の間に、鳥取市の就農者が21%減少した
  • 60才以上だけで、就農者全体の88%を占める
  • 年齢別最大のボリュームゾーンが70代から、60代+70代と若干の若返り
  • 若い世代の離農率が高い
  • 80代の就農者数は減っているが、全体に占める割合は増えている(離農率が低い)。5才ごとに見ると85才以上はむしろ増えている(469人→532人)

このデータからは、誰がどれだけの面積で稲作を行なっているのか、どのような理由で就農、または離農したのかなどが分からないため、上記のようなざっくりとした分析になってしまいます。

(おそらく発表されるであろう)2020年の統計を見てみないと、2つのデータの比較では傾向が読み取りづらいものがありますが、若年高齢関係なく、就農者全体が減少しているのは間違いないでしょう。

この時流に乗り、離農によって使われなくなった水田をトゥリーアンドノーフがどんどん引き受けていきたいと思っています。

先に書いたとおり、300ヘクタールという日本でも有数の規模まで拡大させ、ライスセンターなどの自社設備を持って、流通もハンドルしていく計画です。

ただ、ここで一つの疑問が生じます。

「果たして、離農した方は、使わなくなった水田をトゥリーアンドノーフに貸してくれるのだろうか

これは実に重要な点です。

いかに机上で数字を整え、作業効率化のイメージを膨らませても、水田を借りることができなければ意味がありません。

畑を借りることの大変さや責任の重さは、僕たちがトゥリーアンドノーフを立ち上げてからずっと学び、心を砕いてきたことです。

農産物をしっかり栽培するのは当たり前、地域の方との繋がり、行事への参加、周辺の草刈りや水路の清掃など、その土地に根付いて活動していく者としてに誠意と決意を行動で示し、信頼を勝ち得ないと、決して水田や畑は貸してもらえないのです。

もちろん、米農家として地域でのプレゼンスを高めるようPRもしますし、離農された方から進んで「トゥリーアンドノーフに貸したい!」と思ってもらえるようなアイディアもしっかり考えていますので、時機が来れば実行していきます。

また、もう一つのポイントとしては、先にも書いたとおり、鳥取県は米の産地ではありません。それもあってか、稲作を事業として拡大していこうという米農家、農業法人は非常に少なく、実のところ、僕はそうした方に地元で会ったことがありません。

鳥取が「米の産地ではない」ことが、実は水田の集積に有利に働くポイントではないかと考えています。

ITとロボティクスの導入、自動化

3点目として、ITとロボティクスの導入、作業の自動化です。

水稲は日本全国で栽培されている農産物ですが、栽培方法にさほど地域差がなく、いつ、なにを、どのようにすればいいのか、知識が集積されています。

また、僕たちがつくる小松菜やレタス、キャベツといった野菜と比べて、米は肥培管理が比較的容易で、ほぼ全ての作業が機械化されており、また多くの工程が機械的に管理できます

例えば、水田から水が減ってしまったら、水路の取水口の扉を開けて水を入れ、規定の水位に達したら取水口を閉じる、という作業があります。

一つひとつの水田を回って手作業で水門や吸水口を開閉する作業は、シンプルではあるものの意外と時間を要します。

こうした作業はシンプルなセンサーと制御システムで機械に任せることができるはずです。自動化されれば、1日あたり1時間近い作業時間を削減できます。1か月で30時間、1シーズン(約4か月)で100時間近い削減になります。

将来、僕たちの水田が300ヘクタール規模になった時、削減できる時間は現在の約43倍、4300時間に達します。これは2名のフルタイム従業員1年分の稼働時間に匹敵します。

また、センサーを搭載したドローンによって水田の中で生育の悪い部分を見分けてピンポイントで施肥すれば、水田全体に一様に肥料を散布する従来の方法に比べ、使用する肥料や農薬は最大で三分の一になります。

これも300ヘクタール規模になれば、この差は相当大きくなってきます。

さらに、GPSを活用したトラクターの自動運転化や、コマツの多機能ICTブルドーザーなどを導入すれば、一台で均平から耕起、代掻きまで行うことができます。

こうした機械は当然高価なものなので、簡単に導入はできませんが、ITとロボティクスの導入や自動化は営農の大規模化とセットとなるものです。

なぜなら僕たちは、「1人で10ヘクタールを管理する」という一般的な基準を大きく超えて、「1人で100ヘクタールを管理」することを目標としているからです。

これを達成するためには、徹底的な効率化を進めたうえで、ITやロボティクスの導入、自動化といった先進的な技術を取り入れて労働生産性を圧倒的に高めなければいけません。それがなければマンパワーに頼る旧態依然とした農業となり、高い利益率を出すことはできないでしょう。

手始めに、今年は鳥取市の地域商社の協力のもと、ドローンの活用を試験的に開始する予定です。その様子はまたブログで共有したいと思います。

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以上の3点は、個々に見ればトゥリーアンドノーフ固有の強みとは言えないかも知れませんが、

さて、後半は残る一つ「品種と技術」について共有し、全体をまとめてみたいと思います。


徳本 修一

トゥリーアンドノーフ代表取締役。消防士、芸能マネージャー、歌手活動を経て、子どもたちがおいしく安心して食べられる野菜を作るため鳥取に帰郷しトゥリーアンドノーフを発足。おいしい野菜を作るぞー!(詳しいプロフィールはこちら)

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