2019年の挑戦について- 2018年のふりかえり
徳本です。
毎年、1〜2月の厳冬期は、路地で野菜を栽培している我々にとっては休息の期間であり、と同時に、迎える新しい農期にどのような計画を与えるか検討する時期でもあります。
今年はこの計画立案、さらに2012年のトゥリーアンドノーフ立ち上げ時に掲げた理念の見直しに時間を要したため、今年のスタートが少し遅くなり、それに伴ってこちらでみなさんと共有するのが遅れてしまいました。
昨年の終わりに書いたブログに、こう書きました。
今年は延べ20ヘクタール以上の小松菜を露地で生産し、良いことも悪いことも沢山ありました。
1年の総括がこの一文……我ながら、やっつけ感満載ですね(汗)。
このざっくりとした記述を紐解かなければ、なぜ、今年の新しい計画=僕たちの新しい挑戦=がこの内容なのか、せっかくここに書いたとしても正しく理解いただけないと思われます。
まず昨年、自分たちが直面した問題、とった行動を振り返ります。
2018年のできごと
昨年、2018年のできごとといえば、大きく2つ、夏の大旱魃(かんばつ)と、秋の市場崩壊です。
僕たちが、化学合成農薬や肥料を手段の一つとして選ぶにいたる大きな理由となったアブラムシによる大被害もありましたが、あとになって考えてみると、有機栽培の範囲でも、技術的なアプローチによって被害を低減できた可能性があったと思います。
1か月近く続いた大旱魃
しかし7月上旬から8月中旬まで続いた日照りの前に、我々は完全に無力でした。
もちろん、ただ雨を待つだけでなく人力で潅水するなど、できることはやったわけですが、我々の唯一の生産物である小松菜はほぼ壊滅状態でした。
秋は安定した気候で豊作! しかし市場崩壊
秋になると一転、天候が安定し、また農薬を含めた病害対策を入念に実施したこともあり、とても素晴らしい小松菜が大量に生産できました。夏の損失を取り戻そうと当初の計画よりも多く播種し、ほぼ全てを秀品として生育させることができ、正に豊作でした。
しかし、考えることはどの農家も同じで、市場には大量の小松菜が溢れ、市価が激しく下落。2017年と比較すると、2018年の市価は1/20まで下落し、それが11月から2019年1月頃まで続きました。
契約している取引先もこの影響は避けられず、契約価格を下げたり、契約出荷量を絞らざるを得ない状況になったこともあります。
出荷すればするほど赤字になるため、見事に生育した小松菜を収穫することができず、トラクターで潰さなくてはいけませんでした。
素晴らしい生育を見せてくれたこの小松菜たちを収穫できませんでした
野菜ができないのも辛いですが、きちんと育った野菜が収穫できないことの方が、農家として何倍も辛いものです。
さて、こうした市況でも小松菜は流通し、スーパーなどに並びます。それらの小松菜は、赤字のまま出荷を続けている農家がつくったものは少なく、主に指定産地・特定産地(*)で栽培された小松菜です。
指定産地・特定産地で生産、出荷される野菜は、指定野菜価格安定対策事業及び契約指定野菜安定供給事業の対象野菜となります。つまり価格が保証されているのです。しかし、規定数量以上の出荷をしないと価格保証が受けられないため、市価が暴落しても出荷が継続されます。もともと指定産地・特定産地は生産力があるため、少なくない量の野菜が出荷され続けます。そしてそれ自体が市価の低下に大きな影響を与えることになるわけです。
大旱魃が農業の敵になることは理解しやすいのですが、安定した気候がこれほどの打撃となることは、想定していませんでした。
これらの経験から、僕たちがたどり着いた一つの言葉があります。
(続きます)
*1 指定産地・特定産地…野菜生産出荷安定法に定める作付面積及び共販率を満たす産地。農林水産大臣・自治体が指定し、原則として市町村単位で構成(農林水産省「野菜をめぐる情勢」22P 野菜価格安定対策の概要より) 小松菜は特定野菜産地として、中四国では広島県と香川県の一部が指定されており、西日本でみると福岡県が大規模な特定野菜産地となっている。